それは「知りたい」という「欲」が落ちた瞬間だった。
「あああ、すべて分かった。私はすべて知った」
と圧倒的な実感。圧倒的な安心感。

私は、すべて知っている。
もともと、すべてを知っていたのだ。
私は、すべてを分かっている。
そう、もともと、すべてを分かっていたのだ。
確かに、奥深く、確かに。

自分のことも、世界のことも、
どんな難しいことも、どんな遠くのことも、
どんな昔のことも、どんな未来のことも。
すべて、知っている。
だからこれ以上知ろうと思わない。
なんの疑問もない。何の不思議もない。
その、満ち足りた、膨大な果てしない安らぎ。

それは、たぶん、
たった一つの小さな欲「知りたい欲」が落ちただけ。
でも、それが、
「すべてを知り尽くした喜び」になったのだ。
一瞬にしてそうなったのだ。
なんということだ。

その小さな欲さえなければ、
そう、いつでも、
「知らないものは何もない」になれる。
「私は”神様だ”」になれる。

宝彩有菜