私は、本当に、私が心から尊敬する人と会ったら、思わず自然に、頭を下げて、うやうやしくお辞儀をしてしまう。
私は、本当に、私を愛してくれている人に会ったら、思わずありがたくて、頭を下げて丁寧にお辞儀をしてしまう。

これは、マインドの働きではなくて、ハートの働きだ。心からの感謝の表明だ。ありがたいから自然にお辞儀になる。
自然に頭が下がる。
威張っている人には決して自然に頭は下がらない。でも、心から優しい人には自然に頭が下がる。

ある時、すれ違う人、出会う人、知らない人が、みんな私に、向かってお辞儀をする。
誰か、私の後ろから来ている人の、知り合いかもしれないと、後ろを振り返ってみるけど、誰もついてきていない。
私一人だ。

で、良く観察すると、お辞儀をしているのではない。靴の紐が気になって前かがみになったとか、百円玉が落ちている気がして、道路を覗き込んだとか。何か、首の運動をして、下を向いたとか。
私に、挨拶する理由など無い。見知らぬ私に、挨拶する必要はさらさらない。それはそうだ。

と思って、またしばらく歩いたけれど、どうも、不思議だ。
なぜか、みんな、私にお辞儀をして、すれ違ってゆく。

なぜだろう？

で、分かった。その時、私の心は、愛に溢れていた。
愛そのものだった。愛の光の球だった。
すべての人を愛していた。
すべてのことを喜んでいた。
すべての人が大好きだった。
嬉しくて、楽しくて、私の内側では、私は満面の笑みをたたえていた。
ハートは、温かい、愛の光に溢れていた。

だから、誰のハートも、すれ違う誰のハートも、思わず、その愛の光に頭をさげたくなったのだろう。
私のハートに、彼らのハートが、挨拶をしたのだろう。
でも、あはははは、マインドは、誰のマインドも、照れ屋で、ひねくれ者だ。
思わず、頭を下げてしまった自分を、そんなハズがない、きっと靴紐を見るためだと思ってみたり、何も落ちてない道路上の落し物を探す振りをしたり。まるで、照れ隠しをしている。

それはそうだ。素直に、お辞儀をするなんて。こんなどこにでもいる普通の人、単なる通行人に向かって、それはおかしな話だ。
普通では、あり得ない話だ。でも、思わず、頭が下がってしまったので、なんで下がったのか、マインドが後から取り繕っているのだ。
あはははは、おもしろい。
誰のマインドも、おもしろい。
私は、面白くておかしくて、顔でも少しだけ笑ってしまった。
それは、ハートにだけ分かる、とびきりの笑顔。
顔を上げた人も、笑顔になっていた。
ありがとう、こんにちは、ごきげんよう。

宝彩有菜
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